阿膠とは

漢方の生薬のなかに阿膠とうものがありますので知っておきましょう。

阿膠とはロバのゼラチンのことです。

↑これは鹿の膠

ロバの皮を、毛を取り除いてから煮て作られるゼラチンになります。

コラーゲンを煮ると構造が壊れてゼラチンになります。これはロバ以外に牛、馬、羊でも作られます。

食べ物の煮こごりもそれにあたります。

そんな阿膠の効能の一つに止血作用があります。

これが含まれる漢方には芎帰膠艾湯や猪苓湯があります。いずれも止血作用が目的で入っています。

登録販売者の試験においては漢方の説明の正誤を判断するのにキーワードとして出血を探すといいと思います。

その他の効能は

補血作用・・・貧血や虚弱体質にみられる動悸に甘草、人参と配合する炙甘草湯、また月経異常、不妊症などの婦人科疾患では当帰・牡丹皮と配合して温経湯

身近な漢方の中にひっそり潜んでいるそれが阿膠です。

血虚の理解と基本処方

中医学の概念ではという概念があります。

今回はについて理解を深めたいと思います。

中医学でいう血とは血液と同じ意味と思っていただいていいと思います。

血の働きは

①筋肉や肌皮に栄養を与える:血が充足すれば筋肉は強くなり、顔色も赤く毛髪につやが出る。


②各臓腑、組織の働きに栄養を与える:「素問・五臓生成篇」において肝が血を受け取ると滋養されてよく見ることができる。足が血を受けると歩くことができる。手が血を受け取る
と握ることができる。指が血を受け取ると握ることができる。」

③神を養う:血は精神活動の基本的な物質であるとする。血が充足していれば意識は鮮明で感覚は鋭くココロは健全である。
 

すごく重要な働きをしていますね。そしてそれが足りない場合を血虚と呼ぶことになります。

血虚なら例えば髪がぱさぱさしていたり、目の見え方があまりよくなかったり、精神的に不安であったりします。

では実際にどんな漢方で補うのでしょうか。

治療の方法は補血をするということです。その中で一番基本的な処方になるのが。。

四物湯になります。

この4つの生薬を見てみると血を補ったり、痛みを止めたりという効果があるので婦人科ではよく使われます。

この四物湯をベースとして他の生薬も組み合わせるといろいろな漢方が理解できます。

例えば芎帰膠艾湯、十全大補湯、温清飲、温経湯なども四物湯を基本に作られています。詳しくはこちらを参照してください。温経湯を深堀り

詳細は別のところで。

ミルラとは

3章の咽頭薬で出てくるミルラとは何者でしょうか。

3章の佳境になってくると疲れてしまい、興味よりどのように記憶するかに注力しがちになります。それはしょうがのないことですが、少しだけ時間をとって興味をもって調べてみると記憶にしっかり残りやすいので今回はミルラに焦点をあててみます。

ミルラはミルラノキという木を傷つけて流れ出た樹液が固まった樹脂を使います。

ミルラは紀元前25世紀ごろに使われていたと言われています。

その使用用途は。。。

ミイラ

です。

死体の内臓を取り除いた後の防腐剤や香料として詰め込まれていたそうです。

ミイラ、ミルラ、ミイラ、ミルラ、ミイラ。。。

名前が似ていますね。実はミイラはミルラを語源としているのです。

中医学においては祛瘀・消腫・止痛の効能があり、血の滞りを治したり、腫れを取ったり、痛みを取ったりします。

ミイラの中に入っているものを私たちは口の中に入れてるんですねーーー。

と記憶に残っていただければ幸いです。

温経湯を深堀り

登録販売者試験において婦人薬漢方種類が多く覚えにくいかと思います。キーワードを丸覚えするのもいいのですが、個々の漢方の特徴を深く勉強したい方に向けて書きます。もし登録販売者試験においてここの分野は捨てようと思っている方は見る必要はないと思います。

それも一つの手だと思いますので。

それでは続きを読まれる方、今回は温経湯を掘り下げてみようと思います。

まず登録販売者の手引きにはどのように温経湯を説明しているか見てみましょう。

温経湯は、体力中等度以下で、手足がほてり、唇が乾くものの月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹しん・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれに適すとされるが、胃腸の弱い人では、不向きとされる。

もともとこの処方名前の由来は、冷えが生じて月経の異常があるものを治すことから名づけられたと言われています。基本的に温める薬になります。以下の図が処方の構成になります。

温経湯の説明文章と生薬を見てみると

温める生薬が入っているのでどこかに冷えの文章が欲しいのですが「足腰の冷え」というキーワードが入っていますね。

手足がほてり、唇がかわくものの月経不順、月経困難は血の流れと潤いが足りないために起こるので血に関する生薬と潤す生薬がカバーします。

このように生薬の薬能と症状を照らし合わせればなんとなく理解できると思います。

ちなみにこれは四物湯をベースにされた漢方とも言えます(四物湯-地黄)+その他の生薬=温経湯
詳しくは別記事の血虚の理解と基本処方を参照してください。

ただ。。。

手足のほてりに血の流れ、潤い?なぜ?と思われた方。

正確な説明ではないですが、

中医学では手足がほてるという状態は冷えが体の内部に溜まっていることと、体が渇いているから起きる症状と考えることもあります。なので血の流れをよくして体を潤せば改善するというおはなしです。

それではまた今度。

【出展】金匱要略
【効能】温経散寒・袪瘀養血
【主治】衝任虚寒・瘀血阻滞

三黄瀉心湯

登録販売者の試験問題でこんなのが出たことがあります。

三黄瀉心湯に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。


a 本剤は、胃の不調を改善する目的で用いられる。
b 高血圧の患者は、本剤を使用できない。
c 本剤を使用している間は、瀉下薬の使用を避ける必要がある。
d 本剤は、ダイオウを含むため、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の
授乳を避ける必要がある。
a b c d
1 正 正 誤 誤
2 誤 正 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 誤 誤 誤 正
5 正 誤 誤 誤

答えの前に三黄瀉心湯の構成を見てみましょう。

三黄瀉心湯の構成生薬は黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、大黄(だいおう)の3つからなります。

金匱要略では普通に「瀉心湯」と呼ばれています。

黄連と黄芩の構成は「瀉心湯類」とも呼ばれます。

瀉心

とは心に詰まりがあり熱を持っている状態を改善することを言います。

心を瀉す、すなわち熱を冷ましたり、つまりを取ることを意味します。

3つの構成生薬の働きから見ても熱を冷ます生薬ばっかりで納得ですね。

中医学においては心に熱を持って詰まっている状態では血が熱を持って暴れだすとされるので鼻血、痔の出血、また落ち着かなかったり、不眠などの症状があるとされています。

登録販売者の漢方の説明文では

三黄瀉心湯は、体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重、不眠、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢しやすい人、だらだら出血が長引いている人では、激しい腹痛を伴う下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

のぼせや顔面紅潮、のぼせの症状熱を持って頭の方にまわっているからと理解すると覚えやすいと思います。みぞおちのつかえがあるから瀉心しなければなりませんでしたね。高血圧の随伴症状も熱を持った血が暴れているとイメージしたらなんとなく理解できそうです。

問題の答えは

a 誤 胃腸を改善する薬ではありませんでした

b 誤 高血圧の人に使えます

c 正 大黄が入っているので他の瀉下薬とは避ける必要があります

d 正 文章の通りですね。

これで三黄瀉心湯のイメージはつかめたかと思います。

3章手引き2242行目、三黄瀉心湯と七物降下湯

登録販売者の試験において3章の循環器用薬の漢方は2つの漢方が出題されることがあります。

この2つの漢方において三黄瀉心湯と七物降下湯の説明文を入れ替えて出される問題があります。

問題です。次の文章を読んで正か誤で答えましょう。

三黄瀉心湯は、体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)に適すとされる。

答えは誤です。これは先ほど言ったように、七物降下湯の説明を丸ごと持ってきた文章になります。

正しくは

三黄瀉心湯は、体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重、不眠、不安)に適するとされる。

なんか、似てそうで似てなくてポイントをつかみずらいですよね、循環器の漢方は2つしかないのでまず循環器はどちらか1つの漢方をしっかり理解しておけば大丈夫ということを知っておいて下さい。

今回は三黄瀉心湯という漢方を理解していきましょう。

漢方は生薬の組み合わせです。

三黄瀉心湯の生薬は 芩(オウゴン)、 連(オウレン)、 大(ダイオウ)と3つの生薬からなります。

3つの黄の文字があるので三黄と名付けられているのが理解できますね。

また漢方には瀉心湯類という漢方のグループがあります。例えば半夏瀉心湯、甘草瀉心湯などです。

この瀉心湯類というのは黄芩と黄連を含むグループのことを言います。

瀉心とは胸あたりのつかえを解消する意味と理解してください。そうすればもう一度三黄瀉心湯の説明を見てみましょう。

みぞおちのつかえ、みぞおちのつかえ、みぞおちのつかえ。。。

このみぞおちのつかえというのが瀉心湯類のポイントになります。これは七物降下湯にはこの効能はありません。

再度、問題 次の文章の正誤を判断せよ。

三黄瀉心湯は、体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)に適すとされる。

瀉心湯なのにみぞおちのつかえがないですね。一発で誤りであるとの判断ができます。

また三黄の一つには大黄が入っていると説明しました。よく問題で大黄を含んでいるものの正誤判断が問題で出題されますが、この三黄を理解していれば大黄が入っていることが理解できます。

オンジとは

3章の去痰薬の項目 セネガとオンジ

前回はセネガを取り上げましたが今回はオンジの深堀をしていこうと思います。

手引きでオンジはオンジはヒメハギ科のイトヒメハギの根を基原とする生薬と説明されています。朝鮮半島、中国北部、シベリアで自生しており、日本ではヒメハギに似て葉が細かいことから日本では「糸姫萩」と書きます。

すいませんオンジの写真はありませんので生薬にしたものを載せてます。。。

オンジは漢字で「遠志」と当てます。

なんか意味ありそうですよね。。。

本草綱目を書いた李時珍は「志を強くする」作用があることが名前の由来だと説明しています。

成分としてはオンジサポニンAからGが知られています。

去痰作用の他に気分をやわらげたり物忘れの改善といった効果も見られます。

漢方製剤としては帰脾湯や酸棗仁湯に入っています。

セネガとは

登録販売者試験の3章 去痰薬として出てくるセネガについて

セネガはヒメハギ科のセネガ又はヒロハセネガの根を基原とする生薬と手引きで説明されています。

セネガはインディアンのセネガ族が毒蛇にかまれた際の治療に用いられたとされ、そのためセネガ又はスネイクルートと言われたりするそうです。

日本では明治期以降に北海道で栽培されているとのこと。

セネガの根にはサポニンが含まれセネギンⅠ~Ⅳまでの種類があります。

セネガサポニンは気道の粘膜を刺激して分泌を促進する作用があり、これが去痰作用として働きます。

またセネギンⅢ、ⅣはオンジサポニンのB、Aと同じです。

セネガとオンジはどちらも去痰作用で用いられます。